人生を豊かにする普遍性のある空間
「ケンチク」と「クルマ」の考え方は非常によく似ています。
もしあなたにお気に入りの「クルマ」があったとしたら、
その「クルマ」はあなたの感性に合ったデザイン、素材、色彩などでまとめられていて、
かつ 走る・曲がる・止まる等の基本性能がきちんと満たされていて、
豊かで理屈抜きに満足できる時間を与えてくれる…
そんな「クルマ」ではないでしょうか?
その時間を過ごす‘空間の質’は、‘人生の質’そのものだと思います。
暮らしづくりとは、流行や生活の利便性だけを追い求めるのではなく、
人生を豊かにする「普遍性のある空間」を手に入れることだと思います。
基本概念
その場その時にふさわしい普遍性のある提案をし、そこに暮らす人たちが永きに渡り心身とも豊かになること。
結果 それらの作業が人材育成となり、社会貢献へとつながること。
それが禄設計の想いです。
建築概念
「不易を知らざれば基立ちがたく、
流行を知らざれば風新たならず」
松尾芭蕉は『奥の細道』の旅の間に「不易流行」という概念を体得したと伝えられます。
自然の法則から、永続的に繁栄するためには、「易(変わる・変える)」と「不易(変わらない・変えない)」両面のバランスが重要であると説いています。
近年 私たちの生活や環境は大きく変わり、価値観も多様化したように思います。
あらためて暮らしの基本を考えてみると、身体や環境に負担がかからず、長年の時代変化にも耐えて残ってきたものに価値があるように思います。
なので、提案するものとしては、’和’でも’洋’でもない、それぞれのいいとこ取りをした、時代に流されない「普遍性」を目指しています。たとえば 快適性や安全性、素直な間取りと形、これからの暮らし方の提案、変えるものと変えないものの見極めと提案など。
これらを踏まえ、お客様との対話を重ねながら、漠然としたご要望の中にある本当に必要としている「モノ」を探し、普遍性のある「カタチ」を実現したいと思っています。
設計に対する考え方
私は主に在来の木造の設計・監理の仕事をしています。
独立するまでは建築設計事務所や地元の工務店でキャリアを積んできました。
現場としては今まで数多くの職人さん達と、木造り住宅や古民家の再生工事、さらには運よく文化財の保存改修工事などに携わってきました。
今までの経験を顧みて 在来伝統工法について考えてみると、日本の環境や生活にあった意匠(寸法や材料や技術)を上手く組み合わせていることがわかります。伝統的な意匠・工法は、やはり日本人と日本の文化に合っていると思います。
しかしながら現代社会の価値観では、「持続可能」「進歩」「発展」「新しい」「速い」「便利」といった言葉が、何のためらいもなく肯定的に用いられています。
近代主義に対して楽観的でいられないのが私たちの世代であり、日本文化のアイデンティティの喪失も課題であるといえます。
そういった事情を現代に合わせて、日本の伝統の本質を根底から理解しつつ、何が普遍的かを見極めた上で常に創造的であり続けること。それらを実践して、これからのあるべき日本文化を社会に還元したいと思っています。
近年、日本各地で広範囲での猛暑や冬の極度な気温低下、大雨の頻度の増加などの異常気象が観測されています。
また、エネルギーをめぐる状況は刻一刻と変化しており、これからの社会環境においては如何に効率よくエネルギーをコントロールできるかが大事だと感じています。
それらを踏まえて住宅分野に鑑みると、先進国の中では日本の住宅性能は低いと言わざるを得ません。
これからの住まいづくりの価値観の視点としては、どこのパフォーマンスに重点を置くかが重要だと思っています。
そうは言ってもパフォーマンスの中身は極めて主観的で、施主様の価値観そのものといえます。
個人的な想いとしては、パフォーマンスにおける「エコ」と「エゴ」を半分ずつにしてバランスを取るのが得策であると考えています。
「エコ(eco)」:次世代の「未来」と「環境」を守るために
「エゴ(ego)」:自分と御家族の身の「健康」と「安全」と「資産」を守るために
パフォーマンスを折半に振り分けた上で、それぞれの中でよりきめ細かい優先順位を付けて計画に素直に反映させ、 どんな工法や、素材や、間取りでも、燃費基準を満たせること。
こういった作業が住まいの性能を引き上げ、これからの社会に必要なものになると思っています。